■単結晶/多結晶シリコン太陽電池

◉光発電のしくみ

 ① 反射防止膜を通してp型/n型接合部が、光を吸収します

 ② 光のエネルギーによって、電子が励起されます

 ③ 接合部近傍の空乏層による内部電界により、電子はn型半導体へ正孔はp型半導体へ移動します

 ④ その結果、起電力が発生し、外部回路に電流が流れます

 このようなサイクルが繰り返されることで、光のエネルギーが電気エネルギーに変換されます。

■薄膜シリコン(アモルファスシリコン)太陽電池

アモルファスでは、結合手の長さと角度に揺らぎがあり、周期性がなく、ところどころで4配位を保てず未結合手が生じるため水素と接合させ、結晶の半導体のようにp型やn型をつくって電気伝導性を持たせています。但し、これでpn接合を作成しても非晶質で構造欠陥など品質が悪く良好なキャリア(電子と正孔)の流れを作ることができません。そのために、品質が良い i 型(真性半導体)をpn接合間に挿入することで良好なキャリア移動を実現させています。

◉光発電のしくみ

 ① 透明電極を通して i 型半導体が光を吸収します

 ② 光のエネルギーによって、i 型半導体で電子と正孔の対が発生します

 ③ i 型半導体で生じた内臓電位により、正孔はp型半導体へ、電子はn型半導体へ移動します

 ④ その結果、外部回路に電流が流れます

 このようなサイクルが繰り返されることで、光のエネルギーが電気エネルギーに変換されます。

■多元系 CI(G)S 太陽電池

結晶構造
(出展:佐藤勝昭 化学技術振興機構)

◉光発電のしくみ

 ① 透明電極層を通してCI(G)S化合物層が、光を吸収します

 ② 化合物層から励起した電子が透明電極層に移動し、外部回路に電流が流れます

 ③ 同様にホール(正孔)がMo電極に移動します

 このような電荷の流れで、光のエネルギーが電気エネルギーに変換されます。

◉特徴

 ・基本的な発電の仕組みは、結晶系と同じpn接合

 ・光を吸収する化合物層に銅、インジウム、ガリウム、セレンなどを合金化してp型半導体を作成

 ・直接遷移型半導体のため、1~2㎛の膜厚(同じ発電時、結晶系は約200㎛)で太陽光を強く吸収できます

 ・吸収範囲が異なるセルの重ね合わせで、発電効率向上を図れます

■有機系太陽電池

半導体の性質を示す有機物を有機半導体といいます。有機薄膜太陽電池は、光活性層で接触面積を大きくするために電子受容体(アクセプタ)であるn型有機半導体と電子供与体(ドナー)であるp型有機半導体をヘテロ接合したものです。                                                    ヘテロ接合:異なる種類の材料を接合すること。同じ種類の材料を接合するより結晶欠陥などが少なくなり、特性を向上させることができます。

◉光発電のしくみ

 ① 透明電極層を通して光活性層(ドナーとアクセプタからなる)が光を吸収します

 ② ドナーが光を吸収して励起し、電子と正孔の対(分離状態でない)ができます 

 ③ ドナーとアクセプタの界面で電子移動がおこり、電子と正孔の電化分離状態となります、ドナーがカチオン、アクセプタがアニオンになります

 ④ それぞれ電極に向かい、外部に電流が流れます

 このようなサイクルが繰り返されることで、光のエネルギーが電気エネルギーに変換されます

◉特徴

 ・シリコン系や化合物系などのように無機物材料を用いた太陽電池ではなく、有機物を原材料として作成された太陽電池

 ・有機薄膜太陽電池には、本項で記載しているヘテロ接合を利用したもの以外に、pin型有機薄膜構造を用いたものが開発されています

■色素増感太陽電池

◉光発電のしくみ

 ① 酸化チタン多孔膜に吸着している色素が、光を吸収します

 ② 色素から電子が酸化チタンナノ多孔膜に注入されます

 ③ 酸化チタンナノ多孔膜に注入された電子は、透明電極、外部回路を通って、対極に達します

 ④ 対極の表面で、電子は、電解液中のヨウ素( I2 ) に渡され、ヨウ化物イオン( I- )ができます

 ⑤ ヨウ化物イオン( I- )は、光を吸収して酸化された色素に電子を渡し、色素は再生すると同時に、ヨウ化物イオンは、再びヨウ素( I2 )となります

 このようなサイクルが繰り返されることで、光のエネルギーが電気エネルギーに変換されます

◉特徴

 ・紫外線領域しか吸収しない酸化チタンに可視光を吸収する色素を吸着させた太陽電池

 ・酸化チタンのナノ多孔膜の表面積は、1cm2の面積で、1000cm2の表面積を持つ

 ・蓄電池と共通の構造を持つため、電荷蓄積電極を設けてエネルギー貯蔵型色素増感太陽電池も研究されています

◉備考

 ・ 現在、RICHOから電解液に変えて固体のp型有機半導体を用いた色素増感太陽電池が販売されています。

■ペロブストカイト型太陽電池

ペロブスカイトとは、ABX3で表される結晶構造の一般名称。 Aがメチルアンモニウムイオン(CH3NH3)+、Bが鉛(II)イオンPb2+、そしてXがハロゲン化物イオンIになったものがハロゲン化鉛メチルアンモニウム(CH3NH3)PbX3(X = Cl, Br, I)です。桐蔭横浜大学 特任教授の宮坂力氏が太陽電池開発を主導し、10年ほどでその高性能により世界中を席巻し、競争激化状況です。ペロブスカイト太陽電池は、パワー半導体素材料の酸化ガリウムと同様の日本発の技術で大注目です。

ペロブスカイト結晶
(出展:桐蔭横浜大学 宮坂研究室)

◉光発電のしくみ

 ① 酸化チタン多孔膜に吸着しているペロブスカイトが、光を吸収します

 ② ペロブスカイトから電子が酸化チタンナノ多孔膜に注入されます

 ③ 酸化チタンナノ多孔膜に注入された電子は、透明電極、外部回路を通って、対極に達します

◉特徴

 ・色素増感太陽電池の光を吸収する色素をペロブスカイト結晶に変え、色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池の長所を上手くハイブリッドしたもの

 ・ペロブスカイトは鉛をもつ金属酸化物で且つハロゲンが入っている有機無機ハイブリッドな構造

 ・鉛フリーに向け錫やチタンなどを用いたペロブスカイト太陽電池の開発が行われており、変換効率向上の成果報告がでてきています

 ・ペロブスカイト結晶構造の材料や商品は強誘電体の圧電素子、蓄電材料などに多々使用されています

 ・結晶系太陽電池(赤外吸収)とのタンデムセル(異なる性質の太陽電池セルを重ね合わせる)作成にて、発電効率向上が図れます

◉備考

 東芝が2021年「メニスカス塗布法」を世界で初めて開発し、大面積ペロブスカイト太陽電池の作成を可能としました。